オリンピックへの選考基準の秘密
前回の「はじめに」「目次」「第一章」では、これまでの女子高生オリンピック選手の全体像をお伝えしました。
今回の第二章では、本書の舞台となった2012年のロンドンオリンピックに出場した女子高生オリンピック選手にフィーチャーしていきます。
ロンドン大会に出場した女子高生オリンピック選手は8名(大塚美優選手・渡部香生子選手・内田美希選手・寺本明日香選手・深瀬菜月選手・三浦莉奈選手・畠山愛理選手・土井杏南選手)。
第二章の冒頭では、それぞれの選手がオリンピックへの切符をつかんだプロセスを紹介しています。現在のルールとは一部異なる部分もあるかもしれませんが、競技ごとに違う選考基準、それぞれ「厳しさ」も違います。それでも共通するのは日本のトップクラスになるだけでなく、世界で戦える実力がなければオリンピックの切符は与えられない、ということ。
そして、もうひとつ、ロンドンへの出場を決めた女子高生オリンピック選手に共通していたこと。それは「勢い」や「タイミング」ではないかと思います。試合ではもちろん、タイムや得点を争うわけですが、女子高生でオリンピックに出場を決める選手の場合、中学、高校のどこかのタイミングで急激に成績がうなぎ登りに上がる、ということも少なくないようです。
特に、第二章でインタビューも交えてご紹介した3選手は伸びが顕著かもしれせん。
女子高生の急成長のキッカケはどこに?
第二章で詳細に取り上げたのは、競泳の大塚美優選手、体操の寺本明日香選手、陸上の土井杏南選手の3名。
A大塚美優選手(競泳・400m個人メドレー)
中学に上がるまでは平泳ぎがメインの種目だった大塚選手、たまたま出場してみた個人メドレーでいい成績が出たことをキッカケに全国大会を目指すように。「練習が大好き」な彼女がどのようにオリンピック代表の座をつかむまでに成長したのか? オリンピック出場を決めるレースでは本番での「入賞ライン」を意識するまでになっていますが、そこまでの目線の高まりにも注目です。
B寺本明日香選手(体操)
今でこそ、9年連続世界選手権出場の大ベテランとして女子体操界を支える存在になり、来年の東京でも主力として期待されています。が、ロンドンのときにはまだ高校2年生。誰かと競争するというより、「新しい技ができるようになりたい!」といった興味関心を追求していくことが結果につながっていったことがうかがえる内容。個人総合での戦いと団体戦での戦い方の大きな違いは体験した人にしかわからない複雑さを垣間見ることもできます。
C土井杏南選手(陸上・4×100メートルリレー)
中学生のときに驚異的なタイムを叩き出し、陸上の名門、埼玉栄高校に進学した彼女ですが、高校入学後はベストタイムをなかなか更新できず、伸び悩みます。しかし、コーチとの二人三脚で、スランプを脱し、見事にオリンピックの切符をつかむことになります。「究極の目標」に向かって現在も走りつづける土井選手の原点を知ってもらえればと思います。
最後に、3選手に共通する4つのポイントをまとめて、第二章は幕を閉じます。全体的には数字と事実、それに伴う心の動きを中心として構成した第二章、ただのスポ根ドラマ的な感情表現は少なめですが、オリンピック出場を決めるまでの具体的な流れを追ってもらえると思います。普通の少女がオリンピック選手になるまで、を、のぞき見てみてください。
門脇正法・須賀和
プロフィール
須賀和(すが・やまと)。1980年生まれ。埼玉県出身。埼玉県立浦和高校卒。門脇正法氏からスポーツの取材・ライティングなどの指導を受け、2004年にスポーツライターとしてデビュー。スポーツアスリートを中心に、インタビューをもとにしたドキュメンタリーを手がけるように。その後、コピーライティングなど、ライティングスキルの幅を広げ、現在はWEB媒体、紙媒体に限らず広告関係全般の運用、アドバイザーなども務める。
ブログ:http://yamatosuga.com/
Facebook:https://www.facebook.com/yamato.suga
Twitter:https://twitter.com/ymtsuga